最終値定理(最終値の定理)は、以下のような数式で、古典制御工学では主にシステムの定常値を求めるときに使用します
$$\lim_{ t \to \infty } f(t) = \lim_{ s \to 0 } sF(s)$$
このまま覚えて使用しても良いですが、最終値定理をなんとなく使用するということを避けるためにも、導出方法を理解しておくことは大切です
また、この最終値定理は使用するための前提条件がありますので、それについても説明します
最終値定理の導出
最終値定理は、ラプラス変換を使って導出することができます
ラプラス変換の微分法則より
$$\mathcal{L}\{ \frac{df(t)}{dt}\} = sF(s) - f(0)$$
が成り立ちます
この式において、\(s \rightarrow 0\)という極限をとり、式変形をすると
$$\begin{align*}
\lim_{ s \to 0 }\{\mathcal{L}\{ \frac{df(t)}{dt}\}\} &= \lim_{ s \to 0 }\{sF(s) - f(0)\}\\
\lim_{ s \to 0 }\int_{0}^{\infty}e^{-st}\frac{df(t)}{dt}dt &= \lim_{ s \to 0 }\{sF(s) - f(0)\}\\
\int_{0}^{\infty}\lim_{ s \to 0 }\{e^{-st}\frac{df(t)}{dt}\}dt &= \lim_{ s \to 0 }\{sF(s) - f(0)\}\\
\int_{0}^{\infty}\frac{df(t)}{dt}dt &= \lim_{ s \to 0 }\{sF(s) - f(0)\}\\
\lim_{ t \to \infty } \{f(t) - f(0)\} &= \lim_{ s \to 0 }\{sF(s) - f(0)\}\\
\lim_{ t \to \infty } f(t) &= \lim_{ s \to 0 } sF(s)
\end{align*}$$
のように、最終値定理が求められました
最終値定理の前提条件
最終値定理は、最終値が存在することを前提条件として使用します
最終値が存在するためには、制御量がきちんと収束しなければなりません
制御量がきちんと収束する(安定する)ためには、「伝達関数の分母多項式=0」とする特性方程式の根の実部が負、または一つ以下の0になる必要があります
例えば、伝達関数を\(G(s) = \frac{1}{s(3s+1)}\)としたときの、単位インパルス応答\{y(t)\}を考えると
$$\lim_{ t \to \infty } y(t) = \lim_{ t \to \infty }\{ 1 - e^{-\frac{t}{3}} \} = 1$$
$$\lim_{ s \to 0 } sY(s) = \lim_{ s \to 0 }\frac{1}{3s+1} = 1$$
この場合は、答えが一致し、最終値定理が成り立ちます
「伝達関数の分母多項式 = 0」の解は
$$s = 0~,~-\frac{1}{3}$$
のように、条件を満たしています
一方、伝達関数を\{G(s) = \frac{1}{s(3s-1)}\}としたときの、単位インパルス応答\{y(t)\}を考えると
$$\lim_{ t \to \infty } y(t) = \lim_{ t \to \infty }\{ -1 + 3e^{\frac{t}{3}}\} = \infty$$
$$\lim_{ s \to 0 } sY(s) = \lim_{ s \to 0 }\frac{1}{3s-1} = -1$$
この場合は、答えが一致しないため、最終値定理が成り立ちません
「伝達関数の分母多項式 = 0」の解は
$$s = 0~,~\frac{1}{3}$$
のように、条件を満たしていません
最終値定理を使用する前に、条件を満たしているかの確認が必要です