動的システムに入力を加えたとき、出力は時間により変化します
この時間変化の様子を時間応答と言います
システムによって入力に対する応答は異なりますので、扱いたいシステムが入力に対してどのように応答するのかを知ること、つまりシステムの特性を知ることが必要になってきます
入力から応答を求めるときには、実際に現実のシステムに入力信号を加えて応答信号を観察する方法と、計算によって求める方法の2つの方法がありますが、制御工学の座学では、後者の計算によって求める方法について考えます
システムの応答を知るための信号として「インパルス信号」、「ステップ信号」、「ランプ信号」というものがあります
この記事ではインパルス信号について解説をしていきたいと思います
インパルス入力、インパルス応答とは
インパルス入力とはデルタ関数の入力のことを言います
デルタ関数とは、t = 0のとき、\(\infty\)になり、それ以外の値は0となるような関数です
\(-\infty ~ \infty\)で積分すると、1になるという性質を持っています
このデルタ関数を数式で表すと
$$\delta(t) = \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l}\infty \space(t = 0)\\ 0\space(t\neq0) \end{array} \right. \end{eqnarray}$$
のようになります
このデルタ関数の入力をインパルス入力、それに対する応答をインパルス応答と言います
デルタ関数のラプラス変換
デルタ関数は、連続関数f(t)に対して次のような性質があります
$$\displaystyle \int_{-\infty}^{ \infty } f(t)\delta(t-a)dx = f(a)$$
これを使ってデルタ関数をラプラス変換すると
$$\begin{align*}\mathcal{L}[\delta(t)]
&= \displaystyle \int_{0}^{\infty} e^{-st}\delta(t-0)dt\\
&= \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} e^{-st}\delta(t-0)dt\\
&= e^0\\
&= 1
\end{align*}$$
となります
例題
では例題を解いてみましょう
\(y(t)\)を出力、\(u(t)\)を入力とします
(1)次の伝達関数\(G(s)\)に関するインパルス応答を求めなさい
$$G(s) = \frac{1}{3s+1}$$
(2)システムのモデルが
$$y'(t) = 2y(t) + 4u(t)\space , y(0) = 0$$
となるとき、伝達関数\(G(s)\)に関するインパルス応答を求めなさい
【解答】
求めるのはインパルス応答なので、入力はインパルス入力になります
インパルス入力\(u(t)\)のラプラス変換\(U(s)\)は
$$U(s) = 1$$
となることを使って解いていきます
(1)\(伝達関数G(s) = \frac{出力Y(s)}{入力U(s)}\)であるから、インパルス応答\(y(t)\)は逆ラプラス変換より
y(t)
&= \mathcal{L^{-1}}[U(s)G(s)] \\
&= \mathcal{L^{-1}}[1\cdot\frac{1}{3s+1}] \\
&= \frac{1}{3}e^{-\frac{t}{3}}
\end{align*}$$
となります
(2)まずは、伝達関数G(s)を求めていきます
与えられた微分方程式をラプラス変換して、式変形をすると
$$\begin{align*}
sY(s) -y(0) &= 2Y(s) + 4U(s)\\
(s-2)Y(s) &= 4U(s)\\
\frac{Y(s)}{U(s)} &= \frac{4}{s-2}
\end{align*}$$
のようになります
\(伝達関数G(s) = \frac{出力Y(s)}{入力U(s)}\)であるから
$$G(s) = \frac{Y(s)}{U(s)} = \frac{4}{s-2}$$
となります
よってインパルス応答は
$$\begin{align*}
y(t)
&= \mathcal{L^{-1}}[U(s)G(s)]\\
&= \mathcal{L^{-1}}[1 \cdot \frac{4}{s-2}]\\
&= 4e^{2t}
\end{align*}$$
となります
まとめ
今回はインパルス応答の求め方について簡単に説明しました
インパルス入力は一瞬の入力のようなものであり、システムの応答を求めるときによく使用される信号です
インパルス入力のラプラス変換は1であることは、よく使うので覚えちゃって良いと思います