2×2の逆行列の求め方として公式を使用する方法もありますが、3×3や4×4の逆行列を求める公式はありません。
そんなときに登場するのが「掃き出し法」と「余因子行列」というものです。
今回はそんな「余因子行列」で逆行列を求める方法を解説していきます。
掃き出し法を使う方法についてはこちらの記事をご覧ください。
余因子と余因子行列の求め方
以下の行列Aについて考えます。
$$A = \left[\begin{array}{rrr} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33}\end{array} \right]$$
この行列Aの余因子を$$A_{11},A_{12}……A_{33}$$とすると
余因子行列は$$\tilde{A} = \left[\begin{array}{rrr} A_{11} & A_{12} & A_{13}\\ A_{21} & A_{22} & A_{23} \\ A_{31} & A_{32} & A_{33}\end{array} \right]$$
となります。
ここで余因子行列のa行b列目の余因子は
という式で求められます。
例えば行列Aの余因子行列の1行1列目の余因子は$$A_{11} = (-1)^{2}\begin{vmatrix} a_{22} & a_{23} \\ a_{32} & a_{33}\end{vmatrix}$$
2行3列目の余因子は$$A_{23} = (-1)^{5}\begin{vmatrix} a_{11} & a_{13} \\ a_{31} & a_{33}\end{vmatrix}$$
のように求められます。
つまり行列Aの余因子行列は
となります。
4×4の行列でも同じようにできることがわかると思います。
逆行列を求める手順
行列Aの逆行列を求めるとします。
まず行列式|A|を求めます。
次に行列Aのそれぞれの余因子を求め、余因子行列を求めます。
Aの逆行列は
$$A^{-1} = \frac{1}{|A|}\tilde{A}$$
なので求めた値を代入すると逆行列を求めることができます。
練習問題をやって確認してみましょう。
練習問題
(1)次の2×2の行列Aの逆行列を求めよ。
$$A = \left[\begin{array}{rr} 1 & 2 \\ 1 & 3\end{array} \right]$$
(2)次の3×3の行列Aの逆行列を求めよ。
$$A = \left[\begin{array}{rrr} 1 & 2 & 0\\ 1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & 1\end{array} \right]$$
【解答】
(1)まず行列式を求めます。Aの行列式|A|はサラスの公式より$$|A| = 1*3 -1*2 = 1$$となります。
次に余因子行列を求めていきます。$$\tilde{A} = \left[\begin{array}{rr} 3 & -1 \\ -2 & 1\end{array} \right]$$
よって逆行列は$$A^{-1} =\frac{1}{|A|}\tilde{A} = \left[\begin{array}{rr} 3 & -1 \\ -2 & 1\end{array} \right]$$
となります。
(2)まず行列式を求めます。Aの行列式|A|はサラスの公式より
次に余因子行列を求めていきます。
$$= \left[\begin{array}{rrr} -1 & -2 & 4\\ 3 & 1 & -2 \\ -1 & 3 & -1\end{array} \right]$$
よって逆行列は$$A^{-1} =\frac{1}{|A|}\tilde{A} =\frac{1}{5}\left[\begin{array}{rrr} -1 & -2 & 4\\ 3 & 1 & -2 \\ -1 & 3 & -1\end{array} \right]$$
となります。
まとめ
今回は余因子行列を使って逆行列を求める方法を解説しました。
4×4以上の行列だと余因子行列による解法はかなり計算が面倒です。4×4以上のときは掃き出し法を使うことをおすすめします。