主に自動車用語で使用される「馬力」という言葉
馬の力というので、1馬力は馬1頭が出せる力。と解釈していると思いますが、馬一頭分とは一体どれくらいなのでしょうか
また、似ているようで違う意味の「トルク」との違いは何でしょうか
今回はそんな馬力について解説していきます
馬力とは
18世紀にジェームス・ワットが、エンジンの性能を表す単位として、馬のする仕事を基準にしたことが「馬力」の始まりです
ジェームス・ワットは、産業革命に大きく貢献した人物です
蒸気機関の出力、効率を高めたジェームスワットは、その性能をアピールするための基準を探しており、当時、紡績や交通の動力として活躍していた馬に注目しました
そして、馬に荷物を引かせて、1秒間で33000重量ポンドの荷物を1フィート動かすときの仕事率(550lbf・ft/s)を、1馬力として定めました
この馬力は、「hourse power」の頭文字からHPという記号となっており、イギリス発祥のものなので「英馬力」と言われています
つまり、馬力は仕事率を表す単位なのです
中学や高校で習う、仕事率の単位「W(ワット)」も、このジェームス・ワットから名前を取っています
馬力の単位(HP PS CV kW)
世界で、主に使用されている馬力の単位は4つほどあります
HP
「HP」は先ほど述べた通り、「horse power」の頭文字から取っています
ヤードポンド法を使用していることもあり、アメリカやイギリスの自動車メーカーでは、馬力を表す際に、この「HP」を使用しています
PS
「PS」はドイツ語で「馬の力」を意味する「Pferde stärke」の頭文字から取っています
メートル法を使用しており、1馬力は、「1秒間につき75重量キログラム (kgf) の力で1メートル動かすときの仕事率(75 kgf·m/s)」と定義されています
メートル法がフランス発祥のものなので、「仏馬力」と言われます
ドイツの自動車メーカーでは、この単位を使用しますし、日本のトヨタ自動車もこの「PS」を使用しています
CV
「CV」はイタリア語で「馬 蒸気」を意味する「Cavallo Vapore」の頭文字から取っています
メートル法を使用しており、PSとは呼び方が異なるだけです
イタリアの自動車メーカーではこの「CV」を使用しています
kW
中学や高校物理でよく出てくる記号ですね
ワットはSI組立単位の一つであるため、自動車などの出力を表示するときには、kWを表記することが義務付けされています
先ほども述べた通り、ジェームス・ワットから取っています
それぞれの単位の換算方法
単位の換算方法は以下のようになります
HP | PS CV | kW | |
HP | 1 | 1.014 | 0.7457 |
PS CV | 0.9863 | 1 | 0.7355 |
kW | 1.341 | 1.360 | 1 |
この表を使って
1kW = 1.341HP , 1PS = 0.7355kW
のように換算することができます
トルクとの違いと関係性について
トルクは、物体を回転させる力のことで、[N・m]または[kg・m]の単位で表されます
トルクの式は「接線力×回転半径」で表されます
以下の図のように、回転半径r[m]の円板が、接線方向に力F[N]を受けるとトルクTは
\(T = rF\) のように表されます
ここで

だから\(馬力 = \frac{トルク}{かかった時間}\)
と思った方、とてもいい気づきですが、惜しいです
仕事の場合の距離は直線運動で、トルクの場合は回転半径だから別物なのです
回転運動における仕事率の式は、トルクをT[N・m]、仕事率をP、角速度をω[rad/s]とすると
$$P = T \times \omega$$
のようになります。直線運動における\(W = Fv\)の回転運動バージョンだという認識でいいと思います
「自動車のスペックの読み方」のような記事で、よく書かれている「トルクに回転数をかけるとパワー(出力)になる」というのは、この式からきています
ちなみに、自動車用語で使われる「回転数」の単位は[rpm]で表記されていることが一般的だと思いますが、上の式の角速度ωにそのまま代入しても計算は合いません
計算を合わせるためには[rad/s]に単位を合わせなければなりません
まとめ
今回は「馬力」について解説しました
トルクとの違いや、単位についてなど、細かい内容について理解の一助となれば幸いです
最後までお読みいただきありがとうございました